今回はちょっと専門的な話ではあるんですが、日常的な体の感覚に関係する「リカバリー」の話。

トレーニングをしている人だけでなく、仕事で疲れがたまっている人にも関係のあるテーマです。

「冷やす」って本当にいいの?

みなさん、筋肉痛になったときやケガをしたとき、「とりあえず冷やす」ってしたこと、ありませんか?

僕自身も学生時代の部活では、何かあるたびにとにかくアイシング。

氷のうを巻いて、動かさずにじっとして…というのが“当たり前”でした。

でも実はこの「冷やせばいい」という考え方、最近は少しずつ変わってきています。

冷やすことで一時的に炎症を抑え、痛みを和らげることはできます。

ただし、それが“すべての疲労”や“すべての痛み”に有効なわけではないのです。

冷却が活躍するのは、「炎症が強いとき」や「ケガ直後」。

たとえば足首をひねった、筋肉が強く張っている、関節が腫れてる

こういった“急性期”には、冷やすことで余計な炎症の広がりを防ぐことができます。

けれど、ただの筋肉痛や全身の疲労感に対して冷却を続けると、逆に血流が滞り、回復が遅れてしまうこともあります。

温めると、体が“ほぐれる”

温熱は「慢性的な疲労」や「リラックスしたいとき」にとても効果的です。

温めることで皮膚や筋肉の血管が拡張し、血流が増えることで酸素と栄養素が筋肉へ届きやすくなり、老廃物の排出も促されます。

また、筋温の上昇によって筋スピンドル※1の活動が抑えられ、筋肉の張りがやわらぐことが分かっています。

さらに副交感神経が優位になることで呼吸が深くなり、身体が自然と「休むモード」に切り替わります。

これは単なるリラックスではなく、科学的にも回復をサポートする反応です。

夜の入浴や蒸しタオルなど、日常のちょっとした温熱刺激でも十分に効果があり、翌日のコンディションを整えるための強力なリカバリー手段になります。

※1:筋肉の伸びを感知するセンサー

どっちがいいかじゃなく、“いつ使うか”

冷やすか温めるか。これ、実は「どちらが正しい」という話ではありません。

・炎症や腫れがある → 冷却

・慢性的な疲れ、筋肉の張り → 温熱

こうして「状況に合わせて使い分ける」ことが、本当の意味でのリカバリーです。

むしろ、なんでもかんでも冷やす癖がある人は、回復が遅れているケースも少なくありません。

最近では「冷やさない方が筋肥大が進みやすい」という研究もあり、ボディメイクの観点からも冷却の乱用には注意が必要です。

交代浴という選択肢

ちなみに、僕がよくおすすめしているのが「交代浴」。

冷たい水と温かいお湯を交互に浴びる方法です。血管を収縮・拡張させることでポンプのように血流を促し、疲労物質を外へ流してくれます。

アスリートのリカバリーでもよく取り入れられるこの方法、やってみるとかなりスッキリします。

「疲れてるけど、体をリセットしたい」っていうときにはめちゃくちゃおすすめです。

トレーニングは「やる」と「休む」のセットです。

リカバリーがうまくいっていないと、次のパフォーマンスが伸びないどころか、ケガにもつながります。

ただ鍛えるだけでなく、「整える時間」も大切にしています。

冷やす・温めるといった基本的なリカバリーの仕方も、目的とタイミングさえ間違えなければ、大きな効果を発揮します。